1980年代も終わりを迎えようとしている頃、シューゲイザー(Shoegazer)という新しいスタイルの音楽がイギリスに現れた。このスタイルを確立したと言われているのが、1988年にデビューアルバム「Isn’t Anything」をリリースしたマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)で、彼らに続いてライド(Ride)やスロウダイブ(Slowdive)といったバンドがシューゲイザー・バンドとして名を馳せた。シューゲイザー・サウンドにはギターのエフェクトが豊富に取り入れられ、ヴォーカルのハーモニーがその独創的なノイズと絡み合うように発せられるのがその典型と言える。
当時スウェーデンのポップ・シーンはイギリスから強く影響を受けていたため、やがてシューゲイザーに影響されたバンドも出始めてきた。スウェーデンでは伝説的とも言えるインディーズバンドのポップスィクル(Popsicle)のファースト・アルバムでさえもシューゲイザーの影響を受けていた。
しばらくの間盛り上がりを見せたシューゲイザー人気だが、その後はブームが去るようにトーン・ダウンする。しかし近年、このシューゲイザー・サウンドが息を吹き返しつつある。それはスウェーデンにおいても例外ではなく、今スウェーデンを代表するシューゲイザー・バンドといえば誰もがサッド・デイ・フォー・パペッツを挙げるだろう。彼らはシューゲイザー・サウンドを取り入れたオリジナリティの高いバンドとして、現在スウェーデン国内外で活動している。
2008年にマキシ・シングル「Just Like a Ghost」がリリースされてからというもの、彼らはスウェーデン各地のほとんどのメジャーなクラブやライヴハウスでプレイし、ラジオでも彼らの曲がへヴィー・ローテーションで流されるなど、デビューと同時に多くのファンを獲得し、国外においても着実にファンを増やしている。
サッド・デイ・フォー・パペッツが注目されるきっかけとなったのが、イギリスの人気バンド、テレヴィジョン・パーソナリティズ(Television Personalities)からの1本の電話で、彼らのスウェーデン・ツアーの前座として同行するオファーを受けたことだ。その後も、マネジメント(Management)のようなインディーズ・シーンで強く支持されているバンドの前座をつとめている。2009年のイギリスツアーからは、シューゲイザーの元祖マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがなんと彼らのライブにたびたび訪れるようになった。サッド・デイ・フォー・パペッツはいわば、この上なく“カッコいい!”ファンを得ることとなったのだ。
前述の通り、シューゲイザーとはギターのエフェクトの利いた独特なメロディやサウンドを指すが、サッド・デイ・フォー・パペッツの特徴は、そういったシューゲイザーのサウンドにキャッチーなコーラス・パートを併せ持った、素直なインディーズ・ロックとも言える。彼らは正統派シューゲイザー以外からも、例えばティーンエイジ・ファンクラブ(The Teenage Fanclub)、ピクシーズ(Pixies)、そしてダイナソーJr.(Dinosaur Jr.)といったバンドからも影響を受けている。
サッド・デイ・フォー・パペッツのデビュー・アルバム「Unknown Colors」は日本のインディーズ・レーベル「Fastcut Records」から2008年に「Just Like a Ghost」としてリリースされている。2010年の初めにはニュー・アルバムをリリースする予定だ。
(Text: Gustaf Kjellin)
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